コンディショニングのスポーツ栄養学 (体育・スポーツ・健康科学テキストブックシリーズ)
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市村出版

鉄欠乏性貧血予防のための食品一覧が詳しい。鉄、たんぱく、ビタミンB6、B12、葉酸、ビタミンCの量も一覧できて、何を補えば良いかまでわかるのが良い。レバーは牛、鳥、豚とも栄養素全てが多く、他を圧倒している。マイワシ丸干し、貝類がそれに次ぐ。肉類よりは魚介の方が量もバランスも優れている。どちらもビタミンCは野菜などで補う必要がある。植物性食品にはビタミンB12がほとんどない。肉と魚介で補う必要があるが、小松菜、ホウレンソウ、大根葉、枝豆、ブロッコリーなどどれも優れている。ひじきも良いがVB6、VB12、VCとも他で補う必要がある。米ぬか、ふすま、大豆、卵、アルコール、コーヒーなどは鉄の吸収を阻害する。
トレーニングとエネルギー消費量について。酸素消費1lでおよそ5kcalのエネルギーを消費する。安静時の酸素消費量は1kg当たりおよそ3.5mlなので、1時間に1.05kcalになる。スポーツの消費量は安静時の消費量の何倍に相当するかをMETsで表示する。例えば自転車を22.5~25.6km/で走るMETsは10くらい。時速10kmのランとほぼ同じ。この時、体重58kgで1時間走ると609kcal消費する計算になる。25.7~30.6km/だと12METs。これはキロ5分のランに相当し、731kcalになる。
(最大酸素摂取量VO2maxは現在毎分3lくらい。毎時900kcal消費するあたりがVO2maxの運動に相当する。自転車25km/hまでの速度でVO2max68%はマラソンペース75%よりだいぶ楽、30km/hまでの速度は81%でLTペース(ハーフマラソンペース)86%よりは楽な計算。運動のきつさとしては体感的に納得できる範囲になっている。)

コンディショニングのスポーツ栄養学

図解 豊かさの栄養学〈3〉最新ミネラル読本 (新潮文庫)
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新潮社

欠乏症は多くないが、マイルドな不足による不調は多い。太古、自然のままの食品を食べていた時代、カリウムは取りすぎでナトリウムは不足気味だった。そのため、カリウムの排泄能力は日に240mgあるが、ナトリウムは10mgしかない。現在は、ミネラルバランスが定常的に崩れている。

カリウムは細胞内の方が外より30倍も濃度が高い。マグネシウムも同様。ナトリウム、カルシウムは逆で細胞の外の濃度が高い。カルシウムの場合1万倍の濃度差がある。この差を生みだすためにミネラルポンプが常時働いている。その一つナトリウム・カリウム・ポンプは各細胞に200~300も備わっており、人間の身体の中で消費されるエネルギーの1/4はこれを働かせるために消費されると考えられている。

破骨細胞が通り過ぎた後を造骨細胞が追いかけて新しい骨を作る。両者が休みなく活動することで骨の中のカルシウムは10年間ですっかり入れ替わる。運動で良く使う部分の骨は強くなる。また、骨折してもスムーズにつながる。タンパク質やミネラルが十分にないと造骨がうまくいかず骨がどんどん弱くなってしまう。骨にはミネラルが貯めこまれているが、破骨と造骨により全身のミネラルの多寡の調整がスピーディに行われる。造骨にはカルシウムが最も重要だが、ビタミンDと副甲状腺ホルモンが不足すると腸管からカルシウムを吸収することができない。30代半ば過ぎからは造骨細胞の働きが劣性になる。その後はカルシウムをいくら摂取しても骨のカルシウムは貯蓄は減る一方だが、減るスピードに多少ブレーキをかけることは可能。そうしなければ慢性的な体調不良を引き起こし、はやばやと骨粗鬆症にかかることになる。

カルシウムとナトリウムは細胞の外、マグネシウムとカリウムは細胞内にあってバランスが取れている必要がある。現代人ではナトリウムの取りすぎと他の3種の不足が起こりやすい。筋肉の場合、細胞内でマグネシウムとカリウムが不足し、カルシウムとナトリウムが増えると緊張してしまう。血管の筋肉で起こると血圧を上げる。心筋で起こると不整脈や心筋梗塞の原因となる。骨格筋では痙攣、硬直などが起こる。バランスの調節の仕組みは吸収の効率や排泄の効率もからんで複雑である。植物性食品を自然の状態でとるのが基本である。リンを多く含む肉類はマグネシウムの吸収を阻害する。タンパク質の過剰摂取はカルシウムの排泄を促進する。

貧血は空気の希薄な高地で息が苦しくなった状態と似ている。全身の組織に酸素を運ぶことができない。赤血球を作るには葉酸、ビタミンB12、B6、鉄が必須。どれが不足しても正常な赤血球が作れない。鉄分を多く含むのはひじき、レバー、イワシ、カキ、小松菜、大豆など。鉄の吸収を高めるのは肉類とビタミンC。

最新ミネラル読本

スポーツと健康
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道和書院

78年出版のやや古い本。
スポーツマンは長生きか。若いころにスポーツをしていても、その後やめてしまうと寿命は普通の人と変わらない。どの年代でも運動し続けている人は死亡率が低い。特に運動強度が高い群ほど死亡率は低い。運動をできる人は死亡率が低いのか、運動をすると死亡率が下がるのか、簡単には結論できない。
寝て暮らしたらどうか。3週間から7週間のベッドレストの実験により、筋委縮、最大酸素摂取量減少と起立性低血圧などの心機能低下、骨量減少が顕著に見られる。筋委縮は下肢で特に顕著で腓腹筋とひらめ筋は3週間で20%もの筋力低下が見られた。最大酸素摂取量の減少は主に心臓容積の減少に起因し3週間で10%以上も減少する。これらは運動によって防止することが可能。起立性低血圧は重力が長軸方向に作用しないと悪化する。骨量減少は骨が長軸方向に圧迫されないと防止できない。運動しないことには健康を維持することができない。
死因順位。戦前は胃腸炎・結核・肺炎・気管支炎など炎症性疾患が大部分を占めていた。74年ころには、脳血管疾患、悪性新生物、心疾患が3大死因となり、様変わりである。このうち脳血管疾患の割合はあまり変わっていない。心疾患は慢性リウマチ性、虚血性、その他がある。かつては虚血性心疾患は欧米に多く、日本に少なかった。74年ころには日本でも多くなっている。運動によって心疾患による死亡は減少する。心疾患のリスクファクターは喫煙など他にもあるが、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満などは運動によって軽減することができる。

 

スポーツと健康

新・丸元淑生のスーパーヘルス―銀杏とサメと賢い食事 (新潮文庫)
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新潮社

イチョウ葉エキスとサメ軟骨粉末の商品宣伝のような出だし。ちょっと引ける。前者は脳の毛細血管をやわらかくして広げ、脳への酸素とブドウ糖供給を増やすことで痴呆症から守ってくれる。後者は癌細胞への血管形成を阻害することで強力な制癌効果を発揮する。
現代人の食事は葉酸の不足も著しい。これも癌の発生、発達を助ける。果物と加熱を最小限にした野菜をもっと食べないといけない。特に喫煙者やアルコールを良く飲む人は要注意。

1984年交通事故で死亡した5歳児55人中42人に動脈硬化が認められた。現代人の食事の欠陥だとする。酸化したLDLコレステロールを閉じ込める細胞が血管壁に付着して動脈硬化のきっかけを作る。LDLコレステロールを増やさないこと、抗酸化栄養素を不足させないことが重要。LDLコレステロールは飽和脂肪酸の摂取で増える。コレステロールを含む食品で増えるわけではない。抗酸化栄養素はビタミンE、C、ベータカロチンが強力。これは野菜と果物に多く含まれる。

イタリアではナポリの健康な心臓・血管に比べて北イタリアの不健康度が問題にされている。ナポリでは新鮮な野菜、果物、豆、ハーブ、魚介類の作りたて、取りたてが豊富にある。さらに料理にはオリーブオイルを良く使う特徴がある。北イタリアはバター文化。脂肪の多い豚も良く食べる。パンにもバターは使わないナポリとは対照的。一方でギリシャはヨーロッパで最も肉を多く食べるお国柄だが心臓病はヨーロッパで一番少ない。ナポリ同様オリーブオイルを良く使う。
オリーブオイルはオメガ9と総称される不飽和脂肪酸の一つオレイン酸を最も高率で含む。オメガ9は不飽和脂肪酸の中では最も酸化しにくい。
このためLDLを構成するオメガ9の割合が増えるとLDLの酸化が減る。また、オメガ9はLDLコレステロールを減少させ、HDL/LDL比を高めることも分かっている。このメカニズムで動脈硬化のリスクを減らす。
オメガ9はオリーブの他、アーモンド、アボガドにも多い。紅花油、菜種油にも多い。

オメガ9が動脈硬化を防ぐのは良いが、オリーブオイルは高い。菜種油もオレイン酸を高率で含むが、エリカ酸と言う毒性のある脂肪酸も含み食用に適さなかった。遺伝子工学によってエリカ酸をほとんど含まない新品種ができて安くオメガ9を使えることになる。これがキャノーラ油。紅花油も新品種ができてオメガ9を高率で含む新紅花油がある。次は新品種のヒマワリ油だと言う。
加熱する油料理には酸化しやすいオメガ6ではなく、これらのオメガ9を使うべき。

脂肪の種類と働き、代謝を詳しく分かりやすく書いている。今まで疑問だったことがだいぶ解消。
脂肪酸由来の主な機能物質は3種類。オメガ3系が一種類、オメガ6系の植物油由来が1種類、動物油由来が1種類。このうち動物油由来の脂肪酸は植物油から体内で合成することができる。なので必須脂肪酸は植物由来のオメガ3系と6系。この割合が1対1が理想的なバランスらしい。精製油を使わない時代の日本食はこのバランスが抜群だった。精製油を使うようになってからオメガ6系が10倍以上の摂取量になってしまい、アレルギー体質になった。細胞膜は脂肪酸から構成されるがオメガ3系が多ければ柔軟性が高くなる。赤血球ですら柔らかくなり毛細血管をスムーズに流れることができる。オメガ3の不足は肌荒れの原因ともなる。さらに神経系の生体膜の材料としても重要。成長過程で不足すると脳の生育不良になる。
まとめると。飽和脂肪酸は代謝しにくい状態で体内に蓄積されやすく、LDLコレステロールを増加させるなど良いことなし。まったく摂る必要がない。オメガ9は酸化しにくい細胞膜を構成する。LDLコレステロールを減らす。オリーブオイル、キャノーラ油に多い。加熱する料理にはこれを使うべき。オメガ6は必須脂肪酸だが、サラダオイル・てんぷら油などとして現在では摂り過ぎになりやす。アレルギー体質にするなど害になっている。酸化もしやすいので加熱する料理に使ってはいけない。オメガ3はオメガ6と同量摂りたいが不足しがち。フラックスシード、シソ油、エゴマ油に高率で含まれる。オメガ6よりさらに酸化しやすいので、冷蔵庫に保存し、加熱せずに使う。
マーガリン、ショートニングは、トランス型脂肪酸を高率で含む。これは不飽和脂肪酸の機能を阻害するので健康を害する。代謝の効率も悪く特に心臓の働きを低下させる。

癌を予防することが分かっている食品、にんにく、ブロッコリー、トマト、大豆、キャベツ、人参、玉葱。全ての緑黄色野菜、果物特に柑橘類、オメガ3を多く含んだ魚、お茶。癌を促進するのは、飽和脂肪酸の多い食品と酸化したオメガ6植物油。抗酸化成分が抗癌に効果があることは確実。
脂肪比率20%以下の食品で食事の土台を構成すること。そのような食品には抗酸化成分も多く含まれている。外食では脂肪比率が20%以化の食品を探すのが困難なことが多いので、食事が原因の病気は増え続けるだろう。

にんにくの効用は大昔から知られている。紀元前1550年のエジプトパピルス文書に22種類の処方が記されている。現代医学の研究対象となったのは新しい。これまでに殺菌作用、免疫機能向上、癌予防。以上は生で食べないと効果がない。加熱しても期待できる効果は、コレステロール減少、気管支炎予防、咳を止める効果、血行を良くする効果。特に生のにんにくナチュラルキラー細胞の働きを劇的に高める。癌に対する抵抗力を高める。毎日2片で良いそうだが、、、。

新・丸元淑生のスーパーヘルス

図解 豊かさの栄養学 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

飽和脂肪酸が多くなると室温で固体になる。牛や豚の体温は人間より少し高いので支障がない。同じ脂肪が人間の体温では固まってくるため、血液の粘度が高まり流れにくくなる。赤血球がくっつきあうようになる。食後1時間くらいから赤血球がくっつき始め6時間後にピークに達する。そうすると末梢血管を通ることができなくなり、酸素の供給量が30%ほど落ち込むことも珍しくない、との報告がある。

 

図解 豊かさの栄養学

スポーツと栄養と食品
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朝倉書店

96年10月発行。スポーツするために余分に摂取する必要のある栄養素に言及している。これまで読んだ本には、もっと新しい本でも書いていなかった。今は否定されたことなのだろうか。推奨量がビタミンB1、B2、ナイアシンは5倍くらい。ビタミンCとEは6倍と半端でない。本当なら気になるところだ。
B1、B2、ナイアシンは有酸素性エネルギー産生に必須で、エネルギー産生が高まると消費量も高まるらしい。ビタミンCとEは抗酸化作用があり、運動中に増加する過酸化脂質の生成を抑える。どれも摂取量の増加によって効果があったとする報告と効果がなかったとする報告とがある。結論として、5倍、6倍の摂取で悪影響は報告されていないので、摂取しておいた方が良かろうと言う論調。
ビタミンB1、B2、B6、Cを欠乏させた食事でATとVO2maxが低下する結果を紹介している。しかし2週間くらいでは差がなく、5週間目くらいから明らかになる。
週に2回程度の週末ランナには、何倍もの摂取が必要と言うことはないのだろう。

運動と水、ミネラル。発汗により失う分を補えば良い。
水は1時間に1リットル程度の発汗による分を補う。180ccを10~20分おき。
ナトリウムは神経質になる必要がない。
カリウムは1リットルの発汗に対して180ccのお茶を飲めば足りる。低カリウム血症では筋力低下、無気力、反射の低下が生じる。夏バテの原因とも言われる。
カルシウムとマグネシウムとリンの消費は運動中大きくなる。リンは過剰に摂取しがちなので、特に余分に摂る必要はない。カルシウムとマグネシウムはは骨に蓄積があるので運動中は特に意識する必要はない。カルシウムは普段から摂取不足になりがちなので、特に多めに摂取する必要がある。アスリートは普通の人の倍、一日に牛乳1リットル相当の摂取が目安になる。(これは不足している!)マグネシウムはカルシウムの半分が目安。
鉄は運動で損失が大きいので摂取量を増加させる必要があるが、過剰摂取は害もあるので上限がある。アスリートは通常の2~3倍20~30mgの摂取が妥当。それ以上はいけない。タンパク質と一緒に摂る事。肉類に含まれる鉄が吸収率が高い。野菜の鉄は吸収率が低い。
微量元素については特に増やす必要はない。

アスリートのタンパク質所要量。一般成人はほぼ1.1g/kg。アスリートについては諸説あるとするが、この本では一般人の1.5~2倍を勧めている。1.8~2.0g/kg。
(タンパク質の過剰摂取は肝臓と腎臓に負担をかけるので、あまり勧められない。最近は一般成人の1.1g/kgも多すぎて有害とする説もある。この本は健康を少々犠牲にしてもパフォーマンスを求める方針なので、素人ランナーには危険な気がする。)

運動不足の栄養生理。運動不足は無重力での生活と似ている。
重力下で立っている時、300~500mlの血液が身体の下部に溜まる。無重力環境では1.5~2lが上部に移動し膨らんだ顔になる。また筋肉の緊張収縮の低下が原因の循環系の異常が起こる。骨格筋には廃用性萎縮が起こる。筋重量の低下、エネルギー生成能低下、収縮・弛緩時間の遅延など。特に遅筋の萎縮が顕著であり、遅筋の速筋化が観察されている。骨からカルシウムが顕著に失われる。骨代謝異常、骨重量・強度の低下はなかなか回復しない深刻な問題である。
寝たきりでも、運動不足でも同様のことが起こっている。

(「スポーツと栄養と食品」が運動で消費したりロスしたりする栄養素に多く言及しているが、月間1000kmのトレーニングをこなすようなアスリートが対象のようだ。せいぜい200kmの土日ランナーには当てはまらない。川島四郎さんや丸元淑生さんが書いていることを基本にしておけば十分なようだ。
タンパク質を余分に摂取する必要があると一時思い込んでいたが、それも必要がなさそう。過剰摂取は肝臓や腎臓への負担が大きいのでむしろ摂取しすぎないように気をつける必要がある。これも二人の書いていることに戻ることになる。
カルシウムが不足しがちであることに改めて気づいた。これも二人の指摘にあったことではある。
摂取タイミングについてはいろいろ追加知識がある。
運動直後の筋グリコーゲン回復に糖分をできだけ早く摂ること。この時BCAAがあると筋蛋白の分解を抑制し合成を促進するかもしれないが摂取が必要かはまだペンディング。
カーボローディングはテーパリングしながら2、3日前から高炭水化物食にすれば十分なこと。その前の低炭水化物はあまり必要ないようだ。
ランニング中の水分補給は1時間に1リットルが限度。糖質、ミネラルがあると水分吸収が遅くなるので、夏場は薄くする必要がある。冬場は濃くても良いので、運動中のエネルギー補給ができることになり、パフォーマンスが上がる。
脂肪の種類と役割、所要量についてはまだ分からないことが多い。必須脂肪酸を不足させないように、いろんな種類を多めに摂るのが無難と言うのが大方の推奨のしかたらしい。川島さんは脂肪にはあまり言及していないが、米と豆と魚と種を食べてさえいれば良くて、特にある量まで摂らなければいけないとは考えていなかったようだ。)

スポーツと栄養と食品

長距離走者の生理科学―生理機能特性とトレーニングの科学的背景
クリエーター情報なし
杏林書院

運動中のホルモンの働き。50~60%VO2maxの乳酸性作業閾値あたりから急激なホルモン分泌の変化が見られる。
糖・脂肪代謝に作用するホルモン。
肝臓グリコーゲンを分解し、グルコースを血中に動員するのは、低強度のうちはグルカゴン、高強度になるとアドレナリン、ノルアドレナリン。
肝臓においてアミノ酸、グリセロール、乳酸からグルコースを新生する。
脂肪組織から脂肪酸を動員する。脂肪分解にはカテコールアミンが中心的な働きをする。βアドレナリン受容体を介して脂肪組織から遊離脂肪酸の動員を促す。
遊離脂肪酸の利用を促進するため、グルコースの細胞内への取り込みを抑制する。インスリンは運動中に分泌低下することでグルコースの細胞への取り込みを抑制し、グルコースの動員を補助する。
持久性トレーニングで肝グリコーゲンを動員するアドレナリン、ノルアドレナリン、グルカゴンの分泌が低下し肝グリコーゲンを節約する。逆にインスリン受容体の感受性は亢進していてグルコースの取り込み能力は格段に向上し、運動中のインスリンの低下も少なくなる。
一方で血中グルコース濃度は長時間の運動の間も安定するが、これは脂肪の利用率が増大していることによる。

持久性トレーニングによってミトコンドリア数や毛細血管密度を増加し、乳酸産生を低下し、筋における有酸素性代謝の環境を優位にする。これにより乳酸閾をあげることができる。
持続走トレーニング。距離走、時間走、早い持続走がある。VO2maxの40~75%の範囲で1~3時間の長時間走行を行う。骨格筋の構造的、生化学的変化を起こし、乳酸閾値を高めるのに有効。特に脂質代謝への影響で、遊離脂肪酸をミトコンドリアまで運搬する能力を高める。グリコーゲンの節約を可能にし、走行時の酸素摂取水準維持能力を向上する。
距離走、時間走。LT速度(乳酸閾値速度)を上限にし、10~30kmを連続して走り通す。週に120kmを目標に1ヶ月間行う。ミトコンドリア数を増加する。
LSD走。VO2maxの35~55%(LT-10~40%)で30kmまでの距離を3時間かけて走る。(早過ぎ!)毛細血管密度を増加する。
早い持続走。VO2maxの60~75%の速度(LT+-10%)で5~10kmを2~3回反復する。走行間は10分歩行かジョギングで回復させる。酸化系酵素を増加する。
インターバルトレーニング。心筋を肥大し一回拍出量を増大させる。また解糖系酵素を増加し、乳酸耐性を増大する。
スピードプレイ。LT+-90%を織り交ぜて走りを楽しむ。脂質代謝を亢進するとともにコンディショニングに良い方法である。野外走、クロスカントリーも同様の効果があり、脚筋力、上体の筋力を養成し、走行技術の改善に役立つ。

テーパリング=減少トレーニング。大会直前はトレーニングの疲労を回復するためにトレーニング量を減らす。トレーニング直後は疲労がピークにあり、その回復に伴ってトレーニング効果が現れ、少し遅れて能力のピークを迎える。能力がピークを迎えてトレーニング効果が薄れ、高まった能力が下がり始めてもその低下速度は遅い。疲労はそれよりも早くさらに回復を続ける。このため、次の運動時の能力は疲労回復が完了近くなるころにピークを発揮することができる。
テーパリング期間は1週間から4週間くらい。4週間以上は能力低下の影響の方が大きくなる可能性がある。1週間では短いかもしれない。2~3週間が適切なようである。
VO2maxはこの期間ほとんど減少しないらしい。走の経済性、走行時のVO2も維持される、あるいは改善される可能性もある。
有酸素性能力は高強度低量(週7.5kmのインターバル)によるテーパリングで改善が著しい。筋グリコーゲンの回復は完全休養と同じくらいだが、総血液量、赤血球量の増加が大きい。
筋力については有酸素能力の高い速筋aの収縮速度が改善する。

疲労回復のための糖質摂取。筋グリコーゲンの回復のためには体重1kgあたり8~10gの糖質を摂るのが望ましい。
運動後に早期に回復させるためにはできる限り速やかに補給することが大切。この時、筋グリコーゲンの回復にはグルコース、肝グリコーゲンの回復にはフルクトースが有効である。タンパク質を同時に摂取する方が筋グリコーゲンの再充填が速まる。ラットの実験ではクエン酸を同時に投与すると速まる。ヒトでどうかは不明。
筋を消耗させないタンパク質・アミノ酸摂取。「第六次改訂日本人の栄養所要量」によると持久性競技者は1日に1.2~1.4g/kgが望ましい。運動直後に経口栄養サプリメントを摂取するとタンパク質合成が促進されるデータがある。この時は動物性タンパク質が有利とする。長時間運動時にエネルギーとして利用されるBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)を含んでいるから。運動前にBCAAを摂取すると運動中の筋タンパク質の分解が抑制される可能性がある。
筋疲労を予防する糖質摂取。現在良く行われるカーボローディングは、1週間前から3日前まで通常食、3日前から高糖質食にし、その間テーパリングをする。この方法で筋グリコーゲンレベルを通常の2倍に高めることができる。通常食は糖質50~60%。高糖質食は糖質70~80%。どちらもタンパク質は10~15%。
運動直前の糖質摂取。運動直前30分~45分に75g以上のグルコースを摂取するとインスリンショックを起こす。少量であればその問題がないので、適量を知っておく必要がある。フルクトースはインスリンショックを起こすことなく肝グリコーゲンの合成を3~4倍促進することから、運動直前の摂取を薦める研究がある。
運動中の糖質摂取。70%強度の運動中にグルコースポリマーを摂取することで運動の持続時間が1時間延長したとする研究がある。最初の20分に2g/kg(120g?0.2g/kgの間違いではなかろうか。)、その後20分毎に0.4g/kg(24g)を摂る。45~75%の長時間運動中に10%の糖質溶液を摂取することで筋グリコーゲンを節約できパフォーマンスを高められたとする報告もある。
中枢性疲労を予防するためのBCAA摂取。フルマラソン中にBCAAを摂取すると精神的、身体的パフォーマンスが改善する可能性のあることが示唆されている。血中BCAA濃度が下がるとトリプトファンの脳内取り込みが増えてセロトニンの合成が増える。セロトニンは中枢性疲労の一因とされている。

長距離走者の生理科学